「藤生（仮名）さん、ご家族から電話ー」
職場でそう言われた瞬間、藤生の脳裏に浮かんだもの。
1.ばーさんが死んだ。
2.ばーさんが入院した。
3．ぱぴーが死んだ。
4．ぱぴーの様態が急変した。
6．ままんが入院した。
……予測とはいえ誰でも殺すなよ自分。
いやでもあり得るんだもん現実に。
実際のとこどれも違ったけどさ。
でもよいことでもなかったけどさ。

さあ明日からまた大変だぜ自分。
風邪ひく余裕もないねーあはは。
喉痛くて胃が痛くて寒気がするんだけどさ。

次長が言うのである。
「さっきお願いしたパワーポイント、1部カラーで出して3部白黒でコピーしておいてね」
よいよいのモノクロプリンタを使っているうちの部にカラープリンタなんて高級品があるわけがない。
二つ隣の部にはあるので、そこのカラープリンタにちょちょいと繋いで出力させてもらうわけである。
……おにゅうである。
買い換えたばかりなのだ。
ぴかぴかである。ヤニとトナーで汚れたうちのプリンタとは大違い。
しかも早い。そして印刷がめさめさ綺麗。
これをジェラシらなくて何を妬もうか。
うちの部なんか予算オーバーだからってモノクロプリンタさえ痴呆のを使っているってゆーのに、なにこの活き活きぴっちぴちのやる気十分なマシンわ。
同じデータをうちのプリンタで出そうとしたらLAN関係担当の代理に
「全部一気に出すとデータ壊れて止まるから（総ページ数44）、ちょっとづつ分けて出してねー」
と言われたとゆーのに、
こやつカラーで一気に出したというのに順調にさかさか吐き出しやがるぞ畜生。感心を通り越して苛立たしい。
隣の部がこのカラープリンタを買い換えたという話を聞いた時、藤生と隣の代理はなんか悲しい気持ちで会話したものであった。
「藤生（仮名）さん、隣の隣カラープリンタ買い換えたのしってますか」
「知ってます。てかなんでうちはモノクロさえ買い換えられないのにあっちはカラー新しくしてんですか代理」
代理は厳かにのたもうた。
「稼ぎの差ですよ」
世の中所詮金かい！
資本主義社会の競争っていうのは厳しいね。ふ。
富める者は益々豊かに、貧しい者は益々乏しく。
かくて、貧しさと世間に負けた痛みを胸に藤生は隣の隣の部署から去って行きましたとさ。
貧乏って切ないねぃ……

年が明けたら厄除け大師に行って厄除けのお守りかお札を買うぜ私は。
れっつ厄落とし！

ってそれなら書くなってもんだが。
ちょっとこの辺で吐いておきたいんで書くさね。

父親が今日入院した。
母親は昨日から落ち込みっぱなしだ。
ちなみに父親は入院が決まったときから不安で鬱入りっぱなし。これはもう病気なのである程度仕方ないとして、母親は入院する病棟を下見して一気に急降下してそのまま浮上してこない。
曰く、あんな所にお父さんをいれるなんてかわいそう。
だが入院先はちゃんとした大学病院、近所の某ヤバヤバ病院なんかにいれるよりマシだと思うが。
入院は確かにかわいそうだ。私もそう思う。辛いもんな、何の病気でもあれは。
だがうちにいてもかわいそうなのは変わらない。治んないもん。
それなら医者が治すって言ってるんだからここでちっとばかし我慢して治して楽になった方がいいんでないかい？
うちで延々だらだら半病人してるよりここでいっちょ病人やって真人間になっちまったほうがいいんでないかい？
しかし母はかわいそうを繰り返して泣く。
お父さんがいないと寂しいと泣く。
やっぱり入院させなければよかったと。
母親は感情派だ。一緒にいると悲しむより困ったり心配したりしているオノレがずいぶん冷たい人間なんでないかいと思えてくる。実際冷たいが。
だって今頭の中占めてるの「これからどーすべ」だし。
とりあえず母親まで倒れるの防がないとねー。
寂しいなんて言ってる場合じゃないっての。そんなんじゃ入院した父親が更なる心配にはまるだけなんだから。
気持ちはわかるがそれに流され続けちゃどーにもならないんだってば母よ。
こっちはそう言うんだけど説得されてくんないね、やっぱ。
でもまーどーにかしなきゃいけないし。人生なるよーにしかならないがなせばなることもあるらしいし。
ま、明日からちょと気合い入れてやっていきましょ自分。どーなろーとlife goes onだしね。うん。

いや今度は現実なんだけどさ。
ていうか今さっきの衝撃いまだ冷めやらぬ感じなんだけどさ。
久々に悲鳴あげたよ藤生……。

お米を研いで、寝る前に炊飯器にセットしようと、ザルにあけて流しにおいておいたわけだ。
で、ポットのお湯が無くなったから、薬缶で沸かして入れようと台所に行ったわけだ。
ふと違和感を覚え、藤生はなんとなくザルを覗き込んだ。金属の網越し、白い筈のそれに茶色い物を見た気がしたんである。
──ゴミ？それにしちゃあんな大きなゴミ見過ごすはずがない……
「ひ……っぎゃあああ？！」
白米の上にのぺっといらっしゃったのは、体長5cmはあろうかという蛞蝓さんであった。角を振りかざしてねろねろ〜と蠢いておられた。
速攻ティッシュで掴んで始末させていただいたが、真剣に怯んだよ私は……。
今まで台所にナメさんが出没したことはなく、そして今日特に新しく野菜を買ってきたわけでもない。
どこからどうやってやってきてなんのために白米にとりついたさ蛞蝓。
結局米は洗い直させていただきました。
ヤツが這った粘液がてらてらと残っててねぇ……。
皆様ご飯は炊飯器に入れる前によく確認しましょう。いやまぢ。

この歌作詞寺山修司なんだよね……あしたのぢょお。
で、何故ジョーかというと。
目測を誤って応接室のドアに右パンチを打ち込む。右拳、人差し指の付け根が青い。
別にむしゃくしゃしてたとかそういうわけではなく、純粋にそこに「空間がある」と思いこんで通ろうとした場所にドアが存在していただけ。
だけど〜♪るるるる〜♪
藤生、応接室前にて十秒ほど悶絶。
……誰にも見られていなくてよかった……。

昼休み、銀行に行くついでに本屋に行く。岩下志麻子の新刊を見つけてつい購入。
しかし、「岡山女」というタイトルってどうよ。
見たとたん藤生の頭に流れたのは、
♪岡山で〜生まれた〜女や〜さかい〜♪ってそれは大阪なんだが。
ホラーなんだよなぁ、でも、帯見る限り。
でも♪岡山で〜（以下略）
そんなこと考えるのは私だけでしょうか。私だけか。私だけかもな……
そして次に頭に浮かんだのは岡山にいる親類のおばちゃんであった。
違う、なんかホラーテイストじゃない……。
似た語感のタイトルの漫画で「座敷女」っていうのがあったけど、これはなんか薄気味悪げ且つ妖怪ちっくな感じがするのだが。
どうよ、岡山女。
それとも通説で「岡山の女性はみんなぼっけぇきょうてぇ」とかゆーのってあるんだろーか。うーむ。

年末である。
師走である。
企業が来年のカレンダーと手帳を客先に捲く季節である。
うちの部にもどーんと3箱客先用カレンダー&投資手帳が届く。
手帳は一冊一冊封筒に入っているからよいのだが、問題はカレンダー。
ぺろーんと長いそのままの格好で段ボールに入っている。そして丸めてこれにつっこんでね用の細いビニールが一緒に梱包されている。
……ねー業者で入れてくんないわけ?
固めのポスター紙7枚で構成されるカレンダーは丸めるのに割と力がいる。そしてビニール筒がまた細い。その上そのビニールがわしゃわしゃにすると白く汚く皺がくっきりついてしまうタイプ。
おーい。キレイに入らないんですがこれ。
まずカレンダー丸めが難しい。まっすぐ巻けない。斜めになる。
そういや学芸員の実習で巻物を見るの苦手だったしな自分。でも掛け軸はそこそに巻けたものだったが。なのにカレンダー程度に手こずっていてどうする自分。
でもタケノコになっちゃうんだよな~。
ちなみにタケノコとは業界用語で掛け軸・巻子本などを斜めにがばがばに巻いちゃうことである。モノが傷むのでこんな巻き方をしてはいけない。
まあ今回はブツが別に貴重性ゼロのカレンダーなのでガンガン手荒に扱える分楽であるが。いやガンガンはまずいかもしれないが。
とりあえず、本日20本カレンダー丸めをさせていただく。……まだ三分の一も終わっていない。
このカレンダーすべてを巻き終える頃には藤生もカレンダー巻き職人になれるだろうか。そうしたら同人のグッズでカレンダーやポスター作ってもビニールに入れる作業はばっちりだね!
……ってそんなデッサンの狂いが一発でばれるでかい絵描けないけどな。ふう。

いや私も結構親知らずに命張ったけどさ。
歯茎腫れまくりで白血球頑張ってるなって感じだけどさ。
そーじゃなくて。
隣の次長に頼まれたコピーは某社の経営計画書。
経営計画だけ素直に載せていればよいものを、各支店のスローガンのページなんぞも入っている。
その中の一つ。

「俺はプロだ!
　俺は必ずやる!
　××と●●の為に(何だったか忘れた)
　命を懸けて戦う!!」

……倍角のボールドで書いてありました。
過労死問題の重視される昨今、命を懸けて戦うのってどうよという気もしなくないんですが。
こういうのって朝礼で唱えさせられたりするんだよねぃ。ああやだやだ。
そして忘れたい過去を思い出してしまった。
藤生の最初の就職先はとある電化製品量販店系列のパソコンショップであった。その系列のお店では、朝礼の最後に「売り一本」という儀式をやる。所謂気合い入れだ。
全員足をやや大きく開き、前の足に両手を置き体重をかけ、前屈みの姿勢をとる。
店長に指名された一人が
「本日もー!朝一番からー!
　××徹底ー!□□徹底ー!予算ひったぁーつ!
　売りいっぽぉーん!」
……次のセリフが「よろしくお願いしまーす!」だったか「やるぞー!」だったか「いくぞー!」だったか既に記憶の彼方なのだが。
それでみんなで「おー!」と気合いを入れるわけだな。営業それは体育会系。
ちなみ藤生が所属していた店では、新入社員が春からつけてる見習い腕章を外す為の通過儀礼がこの「売り一本」の音頭取りであった。こういうのは女子社員がやるとあまり締まらないので普段は指名されないが、通過儀礼となると別である。
しかし藤生はやっていない。
何故なら書籍コーナー所属だったため、朝は雑誌搬入で忙しくて朝礼に出なくて済んだから。
あんな恥ずかしい物やりたくないってば全くさ……。

切断した腕の今は無いはずの手が痛む、そういうケースは実際あるらしいが。
抜いて今はないはずの歯にドライバーつっこまれて揺すぶられている痛みがあるってのはどういうことなんでしょうか教えておじいさん。
昨夜はおかげで眠れなかったとも。痛み止め飲んだのに効かなかったともさ、ああ。
アナログの目覚まし時計の秒針がチッチッと時を刻む音に合わせ、骨に染み入ってゆくこの鈍痛。
刺すような鋭さはないが、鈍く、下顎の骨から頭蓋骨に入り込んで、頭の右半分を疼かせる。
朝、ママン曰く
「あんた、明け方唸ってたでしょ、聞こえたわよ」
明け方だけじゃないです。一晩中唸ってましたママン……。
結局腫れも引かず睡眠不足な上薬が切れると歯も痛いため、今日は会社をお休みする。
でも消毒しに歯医者行かなきゃいけないから日本橋までは行っただけどね……。
結局午後はずっと寝込んでましたとさ。
早くお粥じゃないご飯食べたいねぃ。

いやなんつーの。白い歯とピンクの肉片のコントラストがね……。
ちょっぱなから生々しさ失礼。

はい、抜いてきました親知らず。
死闘、二時間。
取れないんだわ、根っこがさ。
そもそも診療台に乗った時から嫌な予感はしてたのである。普段院内のＢＧＭは、鳥の囀りとともにペールギュント組曲の「朝」なんぞの爽やか且つ穏やかな音楽がかかっていたのだが、そのときに限って何故か、曲名は知らねど、何か、不吉。
ＲＰＧテレビゲームでいうなら、ダンジョン・夜系の♪デンデンデンデン♪のどことなく追い立てられるような暗い曲調の音楽であった。
イヤだな〜と思いつつ目の前のテーブルを見れば、白い布に隠されて詳細は見えないが妙に太い器具がずらりと並んでいる。
……隠してあるのは衛生の為かそれとも私の恐怖心を煽らない為か？って衛生の為だろうさ、すでに恐怖心ばっくばくさ。
かといって今更逃げ出すわけにもいかず、抜歯は始まる。
先ず麻酔注射を二本打って、歯茎から出てる上の部分を切断するわけだが。
ちゅいーん！と削り始めたとたん、
「痛いっす！！」
効いてなかったよ、麻酔。
改めて注射打ってハイ開始。
前半はまーそんなハプニングもあったがまーまー順調だったのである。上をとって、切開して、残りの歯を二つに切って上半分を取るまでは。
問題は、下であった。

取れない。
揺すっても引っ張っても取れない。
見ることは出来ないのでよくわからないが、なんかドライバーのような器具を口の中、問題の歯にねじこんで引っかけて、ぎーりぎーりと動かそうとするのだが、どーしても根っこが引っこ抜けない。
しかも。
最初にかけた麻酔が切れてくる。
そして歯茎にまだ膿が残っているそうで、そのせいで麻酔の効きが悪い。痛む都度麻酔をいれるのだが、なんだかもう焼け石に水。
痛いんだよー。もうそのドラバーだかノミだか知らんが突っ込まんでくれ、頭割れそうだよー。死んじゃうよー。
疲れ果ててもう痛みに対しても投げやりである。
そして。
根っこが取れたとき、正直、私にはわかんなかったんだよねー。
でもねー、医者が使ってた道具すっぽ抜けてねー。
「いやー落ちちゃいましたけど抜けたから大丈夫です」
あーそーか、終わったんだ……
と思っていたら、根っこは取れたけどまだ歯茎とは仲良しだった歯を強引に外され藤生、まだまだ甘い己に反省。
できた穴を一針縫う頃には、医者も藤生も疲れ果てておりましたとさ。
「根っこが曲がって歯にしっかりくっついていたから。予想の倍の時間かかったね……」
左様でございますか。
いらんところで根性あるな、私の身体……。
「時間かかったから腫れると思いますので痛み止め飲んでおきましょう。痛かったでしょ、泣いてもいいですよー」
と受付のおねーさんに言われた。
そのときは痛くなかったが、外に出て寒風に吹かれたら三歩で痛くなり、藤生、会社への道すがら泣く。いやまぢ。
会社を出たのは１時５５分だったが、戻ったのは４時１０分であった。ホワイトボードの「帰社予定３：３０」の文字が哀しい。
そして痛み止めが効くまでの２０分、藤生はデスクに突っ伏して呻くことになる。
そして、立てるようになった直後、コピー２０部頼んでくれたＵ次長。ありがとう貴様覚えてろよ畜生……。

ははは、歯が（というか歯茎が）痛くてね〜。
まあ他にもブルーになること色々あったけどー。
でもようやっと腫れが引いてきて一安心。
というか木曜日抜歯に行きたくないぞ。
人間って現金だねぇ。
でも、腫れが引いてきたということは膿が出たということなのか、そこはかとなく口の中に妙な味が漂うことがある。特に食事後。
何ともいえず不味くて不快でいやんな匂いがする。これってひょっとしてＣＭで言ってる「歯周病」ってやつですか旦那。
いや林檎を囓っても歯茎から血は出ませんが。ってあれは歯槽膿漏か。ってそれも歯周病の一種。しかしこのネタ今時の若人にはわからない気も。
うわださ。てかやば。おっさんみたいだよ自分……。

一応読書のジャンルに身を置いてることだし本のコトも書いておきましょか。
「レッド・ドラゴン」レクター博士登場〜。どんどんぱふぱふ。
いやあやっぱりこの人は自分のこと語っちゃ駄目だね。他人をひっかけてべらべら喋らせて謎かけかましておたおたするのを見て楽しまないとねー。
ただのシスコンでカニバリズムぶちかまされちゃ喰われた人も浮かばれないってばさ……ってもとより浮かばれないだろうけど。
まあなんだ、この人は結局檻の中でアドバイスしてるのがベストっつーことで。ええ暴言なのは百も承知。いや外出すと迷惑だし。ストーカー始めるし。変態だし。って食人鬼で大量殺人者な時点で十分変態だろう自分そこ気づけ自分。

手術です。

以上、「サ●゛エさん」の次回予告風にお読みになると臨場感が増してよいかと。
なんの臨場感ってそりゃ不肖藤生のなんかもーどーでもいいやな気分なハイテンションでございますよ旦那。

昨日の晩から右下奥の歯茎がなんか「腫れてるかな〜？」とは思っていたのである。
朝になったらやっぱり腫れていたのである。
そして今日は歯医者の日。先週削った歯に銀を被せるのだが、ついでにこの腫れも見てもらおうと思ったのである。
よせばいいのに。いや黙っていてもばれたか多分。
かくて歯医者、腫れた歯茎をぐにぐに押しつつ、「ここ痛いですか〜？」
ああ、痛いとも。
一番奥の歯と親知らずの間。
前もそーいや痛くなったんだよね〜。一回目は治療済みの奥の歯の内部が化膿してて神経取り直したんだよね〜。二回目はタイ旅行の直前だったんだよね〜。向こうで歯医者にかかるくらいなら鎮痛剤飲み倒して胃痛に苦しんだ方がましと思っていたら三日目には痛み引いたんだよね〜。
………………痛みひいた？
ああ、やっぱり言うんじゃなかったよ自分！！
そのうち痛くなくなるよこれ！！
藤生、この時点でようやっと己の失策に気付いてちょっぴり後悔。
さてレントゲン撮って写真を見つつ歯医者はのうたもうた。
「これが親知らずでしょ、で、これが一番奥の歯で、この間のここね、ここに雑菌がたまってこの下の筋を刺激してるから痛いわけ」
はー成る程。とりあえず頷く藤生。
「とりあえず今日は消毒しておきますけど、この親知らず、取っちゃった方がいいねー」
さすがにこれには頷くことができず固まる藤生。
だが医者、容赦なし。
「ほら、これ真横に生えちゃってるから。来週取りますから、これ」
「は、はぁ……」
「隣の歯にぶつかってますから、そのまま抜けませんから。上半分切断して、で、そのあと潜ってる根を取ります」
………………取りますって、どうやって？
「切開します」
嗚呼、やはし！
しかしこの歯医者はすでに藤生が痛みに対して激しく引け腰なのを知っているらしく、具体的にどうこうするとは言わない。だがしかし、
「来週、多分かなり時間かかることになりますから」
要はオオゴトなわけね……。
藤生、真剣に泣きたくなる。
手術なんかしたことないよう。この親知らずは前の歯医者の時もやばいと言われ、手術のために大学病院まで紹介されたのにそれでもさりげなく放置しておいたほど手術イヤだったのに……。
だって歯茎の中で親知らず割って２時間かけて手術したとかいう話聞かされて親知らず抜きたいとか重うかよちくしょう。
なんかよろよろして帰ったら隣の代理が
「ちなみに僕は２本抜きましたが３日間血が止まらなくてねぇ……」
と嬉しそうに語ってくれた。麻酔が切れたあとが辛いんだってさ。うう。

さーて来週の歯医者さんはー？
「親知らず、切断」「根っこを排除する」「歯茎縫合」の三本です。また見てくださいねー！
ジャンケンポン！（ちょき）うふふふふふっっ

どーでもいいがあの最後のサ●゛エの笑いが妙に気になるのは藤生だけだろうか。

鯖と言ってもネット界の俗語の方。
所謂サーバ。
朝いつも通り出社してＰＣを立ち上げてパスを入れて……あれ？
ログオン出来ませんがな貴方。
やだなー代理あんたまた私のポート使ってるんかい？
そう、うちの部はよいよいの痴呆プリンタ＆コピーを騙し騙し使っている貧乏部署。ＰＣは人数分に足りず、社員の若人は自前ノートＰＣ持ち出し。会社のＰＣ数に合わせてあるのかポートも足りない。メールアドレス、言わずもがな。
しょーがないなぁ、どーせ代理すぐ外出するだろうから向こうがＰＣ切ったら入ればいいや……と思ったのだが、ふと隣を見るとＰＣにスイッチは入っていない。
そういや、ポートがダブった時はメッセージが出るのに出ていないのもおかしい。
おっやー？と思いつつログオンし直してみる。
やはりサーバにアクセスできない。
首を傾げていると、近所からも「入れないよー」「隣でも繋げないってー」の声。
ねぇ社員の君ら、私より先に出社してるんだから繋げないなら繋げないって忠告してよぷりぃず。
何度かしぶとくチャレンジしてると、おっと、ログオン出来ましたよ。でも異様に重いですが。
だがそんなことにめげている場合ではない。
私支店からのメールチェックしないと今日のお仕事できないんだよ！
そして他のお仕事のデータのほぼサーバの個人フォルダに入ってんだよ！！
でもこの腐りかけの鯖はログオンできたものの、繋がったり音信不通になったり、気まぐれなんだよね〜。
印刷データ流してる途中に接続が切れるせいで、プリンタは文字化け続出。ただでさえよいよいなのに。
データを流した途端「プリンタは利用できません」
いくらあれが耄碌しとってもオノレの仕事くらいわきまえておるわあ！繋ぎをさぼってるのは鯖、貴様だろう！！
……落ち着け藤生。風邪にさわる。
そんなこんなで２時間ほど苦闘していると、サーバ管理者から「復旧しました」とのメッセージが流れてくる。
「ああ、やっと……」
と暗闇に射す一条の光を見つけたが如く感動に震える指でというのは嘘だがログオンし直しし直し！
だが。
「サーバがみつかりません」
……をい。サーバ管理者。
さっきのアレはなんだ私の願望がみせた幻かそれとも貴様私を謀ったか偽りを申したかざけんじゃねぇぞ畜生。
結局本日の藤生は仕事の半分を明日に持ち越したまま定時で帰りましたとさ……。

というわけで風邪、いまだ治らず。
髪の毛カラーリングしたら予想とイマイチ違う色になるし。ただでさえ枝毛の髪の毛はさらに荒れるし。ってそりゃ当然なのだがいい加減頭がプリンになってきたので染めざるを得ない。しかしどうしていつも赤っぽい色になるのだ私の髪。

最近そういや全然本のこと書いてないな自分。ジャンル読書だというのに。
「蜘蛛男」読了。四十絡みの渋いダンディな悪役が「すてき」を連発してくれるナイス小説。野郎のセリフの語尾が「〜かしら」だったりするのは時代といえようか。しかしここでもやはりパノラマなのだな江戸川乱歩……。
そんなわけで「レッド・ドラゴン」読み始める。まだレクター博士は登場せず。この話の中ではまだ獄中なんだから、まだきっと格好いい彼のはず……そう思いたい今日この頃。
鼻が詰まってつらいよう……

タオル拾おうとしてドアノブでこめかみ痛打した……

うちの部に大流行。風邪。
しかも罹るのはみな若人。
藤生も例外にもれず、朝から体の節々が痛いな〜と思いつつ出勤したら、先輩の女性、ついにダウン。
そしてうちの部に女性は藤生を含め二人しかいない。
朝礼でＴ次長が、
「今日は女性一人しかいないのであまり仕事を頼まないように」
だが次長、今日のアポ無し来客２件をぶちこんでくれた貴方が一番私を苦しめたよ……
ていうかなんで営業系でもないのに４件もあるんだ来客……
そしてそのうち３件がＴ次長絡み……
１０時頃から体調は目に見えてダウン。喉は痛むは咳は出るわ鼻は詰まるわ。
ただでさえ散漫な注意力と集中力がどんどん拡散していくのがわかる。
おかげでミス連発さぁ。はっはっは、ごめんよう皆。
早退した方がよっぽどましな状態だったが、女性が他にいないので帰るに帰れない。
生殺し。
今日の夜、飲みおごってもらう約束だったが、明日仕事いけないと困るので涙を呑んでパス。
本当は休みたいんだけどね……
明日は客へのプレゼンがあるから、客ご案内＆お茶出し担当の藤生は休めないのさ〜。
……もし藤生が死んだら新人君に制服きせて女装させて場を取り繕ってね次長……

いやなにもめぐってないが。
今日も今日とて歯医者である。
「まず噛み合わせの歯の型取りましょうね〜」
………………それだけ？
わぁい、今日は藤生ってば楽勝？

……今帰宅してつらつらと考えるに、何故この時点でそこまでつーすいーとな夢を見たのか、自分がさっぱり理解できない。
先週の時点で「削ります」と宣言されているのである。
そんなわけでとってもブルーな気分で八重洲に向かったのである。
なのにどーして最初に「型どりします」と言われただけで「それだけ？」とか思うよ自分。
型をはずして口を濯いだ後、歯医者は不吉に私の横たわる椅子を深く降ろした。
半ばのけぞり状態の藤生の上の歯を執拗にチェックしている。
「うわーん！虫歯みつかるから見るんじゃない！！」
必死で電波を飛ばす藤生。
通じるわけがない。
というか歯医者にきて何を抜かすか。
それ以前に先週何を言われたか本当に理解しているのか。
「藤生（仮名）さんは麻酔した方がいいんでしたっけ？」
そんな藤生の躊躇に気付きもせずのたまう歯医者。
電波説得失敗。
そして反射的に激しく頷く弱気な私。
この歯医者は麻酔注射はあまり痛くない……。
そういえば前通っていた新浦安の歯医者は怪しい秘密兵器のような麻酔注射を使っていたがあれは何だったのだろう……。
そんなことをつらつら考えながら削られていると、いきなり歯茎まで削られてしまったのことよ。
先生、さすがにそこは痛いってばさ……。
そして、その後再び型をとり、その間にうつらうつらしてしまう藤生。
眠りに落ちかけて、リクライニングした椅子の上でびくっと痙攣すること数度。
助手のねーちゃん見てたよな……うわはずかし……

池田昌子の一人語りの会を聞きに北鎌倉は円覚寺にゆく。
メンバーは京極友達のＲさんＴ主任Ｓちゃん。
ちょっぱなから藤生遅刻。しかしＲさんも遅刻。ちゃんと来たのは主任だけ。そして北鎌倉にいったら、Ｓちゃんは日にちを間違えていた……。
演目は今年は宮部みゆきの「幻色江戸ごよみ」より「まひごのしるべ」「神無月」。
「神無月」はＢＧＭいらなかった気が・・・語りのみの方が雰囲気でたと思うんだけどなぁ藤生は。
でもさすがに池田昌子さんの声で最後の「神様は〜」の一文を言われるとぞくっとした。うむ。
夕方の部を取ってもらったので、終わったのは夜６時。夜のお寺とゆーのは初めてだけど雰囲気あってよいね。
終わったあとは大船で御食事しながらだべるだべる。つばめグリルはやっぱり美味しい。
しかし、世間に知られている筒井康隆の代表作って真剣に何だろう……
「時をかける少女」はよいとして、あとはやっぱり「断筆宣言」？
七瀬三部作って、あまり世間に知られてないような気もするんだけどどうだろう。ＳＦ好きな人には有名だと思うけど。

ハムスターが太った。
いや前から太っていたが。
最近さらに太った。
このままでは何度目かの強制ダイエット突入は避けられないが、冬だし皮下脂肪厚くてもいいかなーという気もしてくる。
しかしエサの量特に増やした覚えもないのだが……
だがしかし。はむはうす（ただの木箱）からちろっと覗く、やった覚えのない林檎の皮を藤生ってば発見。
……ママン。勝手に与えたね……？
追求してみれば、毎日昼食べた林檎だの梨だのの皮と芯をくれてやってるというじゃあーりませんか。
ママン、時々ならいいよママン。
でもね、毎日だと、うちのナマモノ、とってもたぷたぷに肥え太ったよ。
まあ可愛いからいいんだけどさー……

私だよ。

うちのママン曰く。
午前三時頃、最近不眠な彼女が不審な物音で目を覚ましたところ、寝ているハズの藤生の部屋に明かりがついている。
怪しく思って入ったところ、何故か藤生は寝間着を着替えようとしており、ママンに
「服来たまま寝ちゃったから着替える」
とのたまったらしい。
すみません、藤生記憶ないんですがママン。
てか不眠なアナタが寝ぼけたんじゃないんですかママン。
でもアナタはあくまでも寝ぼけたのは藤生と強硬に主張なさるのねママン。
えーどーよ私真剣にそんな真似しちゃったのかよ待ってよそれやべーだろー酒飲んだわけでもないのに。

そしてその話を隣の代理にする。
「藤生（仮名）さん、そのうち『山に帰りたい』とか言い出したら危ないですよ」
「はい？山？」
「箪笥の中に白パンとか入ってないですか？」
………………ハイジ！
クララが立ったよ、代理！
そうじゃないだろう自分。
「いや、入ってないと思いますけど……」
「しかしハイジにクララにペーターと外国名なのにどうして山羊はユキちゃんなんでしょうねぇ」
じゃあ藤生も聞きたいのですがどうしてそんなん覚えているんですか代理。
そしてその後ロッテンマイヤーさんの話題で盛り上がる二人。

今度夜中寝ぼけたらやはり山に帰りたいのだろうか自分……