それはとある支店からの一本の名指し電話から始まった。
『藤生(仮)さんて人いるかなあ』
それはワタクシですが何か。
最近おたくさんに係わるお仕事なんざやっちゃあいないですよおぢさん。
『あのさあ、普通に漢字変換して出てこない漢字ってどうすればいいのかなあ』

IMEパッド呼んでくれ。

というか何故それを電話で私に聞く。
だがそんなのそちらで解決してくださいと冷酷に切るわけにもいかないので対応する藤生。本社は支店をなめてるとクレーム喰らうのも嫌だし。
「えーと、IMEパッドで手書き検索しても出てこないですか?」
『何それ』
「えーっと……画面上に“あ”とか“般”とか本のマークとかのでてる小さい棒みたいのって出てますか」
『うん。出てるよ』
「それのペン立てのようなマークを押すとですねーIMEパッドというものが出てきて、それで手書きで字書いてみて捜してみてください」
嗚呼なんで私こんなことを見ず知らずの支店のおやじに教えているのであろうか。
『そうか、ありがとうちょっとやってみるね』
おじさん支店にパソコン聞ける人いないのだろうか。
やれやれと芙蓉書類をシュレッダーなぞしていると、暫くして再び名指しで電話が。
『あのね、言われたとおりにやったんだけどやっぱりないわ』
「ないですか?どういう漢字ですか?」(疑いモード)
『憲法の“憲”て字のカンムリの下の部分が突き出てなくて“王”って字になってる字』
その字には藤生は覚えがある。客先に出す書類でその漢字が出てきて(人名)、しょーがないので古いWin95のボロパソの外字エディタで外字を作ってプリントアウトしたのだ。おぢさんが捜してもないはずである。
そうか、それで藤生に電話がかかってきたのね。でも冷静に考えると「それは外字で作ってください」で藤生のお仕事的には終了でいいと思うのだが。
「あー……それはないですね。外字作らないと」
『外字ってなに。どうやって作るの』
前途多難。なんですかやっぱり私が教えてさせていただくんですか。負けちゃ駄目、藤生!!などと自分に励ましの言葉をかけつつ、
「まずですねー、スタートボタンを押していただいて、プログラムからアクセサリを選んでいただくと“外字エディタ”というのがあると思うんですが」
『ないよ』
え゛。
「……な、ないですか?」
『うん、全然ないねー』
え、えっとぉ……
「あの、パソコンのOSは何をお使いで」
『知らない。会社でほら最近導入されたやつ』
「あ゛」
そーいやこの会社、去年カードリーダ付きの専用マシンを使うわからんオリジナルなシステムを支店に投入したのであった。ちなみに本社にはその専用マシンの数が足りないため、ほとんどの人間がWin95や98やNTを使っている。
そいつは基本はNTベースのはずだが、もしかすると外字エディタがインストールされてないのでは……
藤生、うちの課に1台だけある専用マシンに社員証を差し込んで立ち上げてみる。

うわーいやっぱり入ってないよ。ヴァカー。

「え、えーっとですね、そのパソコンだと漢字作れません……」
『えー。じゃあどうすればいいの』
「そちらに普通のパソコンありますか?Windows95とか98とかの」
『98ならあるよ』
「じゃあそっち立ち上げてください……」
さてここで“じゃあ一緒に作るので私の言うとおりに操作してくださいねー”ということの運びになるわけだが、その前にももう一つ問題があった。
ボロパソがデスクトップに格上げされ、今藤生が使っているパソコンはWindows2000。
普通のクライアントじゃ外字エディタ使う権限がねぇじゃねぇかよこいつがよ。
急遽管理者権限を持つU代理の席とノートを借りることに。
それにしても何故に私はこのような事をやってるのであろうか。
「すみませーん、じゃあ改めてスタートボタンを押してプログラムから……」
しかも98と2000では微妙に操作が違って、
『えー、そんな項目出てこないよ』だの
『そんなことできないよ』だの言われてしまう藤生。
外字が出来上がり、Wordで外字を出す方法まで終わったときには、最初に電話を貰った時刻から約2時間が経過していた。
電話を切ってぐったりする藤生に、U代理の隣席のO君が一言、
「藤生(仮)さん、何やってるんですか」
そんなん私がききたいです。

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