アイスを巡る攻防

2001年3月8日
会社が、250円の高級アイスクリームを50円で売って、売り上げを自然保護に寄付するというチャリティーバザーを開いた。
今時50円じゃガリガ○くんすら購入できないというのに、社会貢献室ったら太っ腹。
藤生は速攻買いにいった。5種類あるのに買えるのは一人2コまで。大盛況なのでまあ仕方あるまい。しっかり2コ買って、部の冷蔵庫にいれておく。今日のおやつと明日のおやつに食べるつもりであった。
しかし3時、藤生は忙しかった。大量のコピーを終え、
「さあおやつだぜ!!」
うきうきでアイスを取ってきて席に着いたのは4時を回った頃。暖房の効いた部屋で、疲れた時に食べるアイスは本当に美味しい。しみじみと幸せを噛みしめていると、隣から
「……美味しそうですね」
占い大好きK代理であった。
「おいしーですよー」
のほほんと答える藤生。
「……いいなぁ」
「社食で買ってくればいーじゃないですか」
「4時だから終わっちゃってます」
「じゃーしょーがないですねー」
藤生はアイスの方に集中しているので適当に流す流す。だがしかし。
「……美味しそうですねぇ」
なおもしつこく食い下がるK代理。ほ、欲しいのかひょっとして?!
藤生、ちょっぴり嫌な予感を覚える。
「コ、コンビニでも行って買ってくれば……」
「でもコンビニには『ばななちょこうぉーるなっつ』は売ってないじゃないですか!!さあどうしたんですそれは正直に言いなさい」
人が喰ってるアイスのフレーバー名までチェックしないでください代理。というかそこはかとなく脅迫テイスト入ってます代理。
社のチャリティーバザーでげっとした旨伝えると、
「なんで僕の分買ってきてくれないんですか!!」
「なんで貴方の分買ってこなきゃいけないんですか……」
「今まだ売ってますかねぇ?」
「いや11時から販売でかなり売れてたから多分もうソールドアウト……」
「……いいなぁ」
「ええまあ」
「美味しそうに食べてますよねぇ」
「美味しいですから」
「……ばななちょこうぉおるなっつぅうううううううう」
唸るなおっさん。
「そんなに喰いたいですか代理……」
「喰いたいとも」
そして即答するな。
「バーモントメープルでよきゃ売ってあげます……」
藤生、甘党男に負ける。
「やったぁ!なんだぁちゃんと在庫あるんじゃないですか、それならそうと早く言ってくれればいいのに〜」
ちなみにその在庫は私用ので販売目的ではないんだがな……。
「……300円なら売ってあげます」
「気のせいか定価より高くつけてませんか」
「気のせいじゃないです」
「そんなこと言わないで売ってください」
「じゃあ100円」
「100円なら買います」
かくて藤生が金銭的にはK代理に奢ってもらうカタチで落ち着く。藤生の心的には落ち着いていなかったが。畜生。
だが奴には先日うさぎやのどらやきを土産に買ってきてもらった恩がある。
いやだがしかしそれも元はといえば、その少し前、私が「女の子だけにあげる」と部長からもらったどらやきを喰うヒマがなく、机の上に放置して残業していたところをK代理に見とがめられ、
「なんですかそれ」
「どらやきです」
「見ればわかります。で、どうしたんですかそれ」
「もらったんです」
「なんで僕にはないんですか」
「女子社員だけもらったんです」
「ふぅんそうですか……いいなぁ」
「ええまあ」
「……食べないんですか?」
「今作ってる資料が出来たら食べます」
「いいですねぇ。ふーん」
「……」
「まだ食べないんですか」
「まだ終わってないので」
「僕どらやきって好きなんですよねぇ」
「はあ」
「……食べないんですか?」(以降繰り返し)
「……半分に割って喰っていいですどうぞ……」
そんなやりとりの後、
「じゃあこんどこのお礼にうさぎやでどらやき買ってきますから」
ということでもらったものである。
恐るべし、甘党の執念。
ちなみにそんな彼は二児の父だ……。

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