いやなんつーの。白い歯とピンクの肉片のコントラストがね……。
ちょっぱなから生々しさ失礼。

はい、抜いてきました親知らず。
死闘、二時間。
取れないんだわ、根っこがさ。
そもそも診療台に乗った時から嫌な予感はしてたのである。普段院内のBGMは、鳥の囀りとともにペールギュント組曲の「朝」なんぞの爽やか且つ穏やかな音楽がかかっていたのだが、そのときに限って何故か、曲名は知らねど、何か、不吉。
RPGテレビゲームでいうなら、ダンジョン・夜系の♪デンデンデンデン♪のどことなく追い立てられるような暗い曲調の音楽であった。
イヤだな〜と思いつつ目の前のテーブルを見れば、白い布に隠されて詳細は見えないが妙に太い器具がずらりと並んでいる。
……隠してあるのは衛生の為かそれとも私の恐怖心を煽らない為か?って衛生の為だろうさ、すでに恐怖心ばっくばくさ。
かといって今更逃げ出すわけにもいかず、抜歯は始まる。
先ず麻酔注射を二本打って、歯茎から出てる上の部分を切断するわけだが。
ちゅいーん!と削り始めたとたん、
「痛いっす!!」
効いてなかったよ、麻酔。
改めて注射打ってハイ開始。
前半はまーそんなハプニングもあったがまーまー順調だったのである。上をとって、切開して、残りの歯を二つに切って上半分を取るまでは。
問題は、下であった。

取れない。
揺すっても引っ張っても取れない。
見ることは出来ないのでよくわからないが、なんかドライバーのような器具を口の中、問題の歯にねじこんで引っかけて、ぎーりぎーりと動かそうとするのだが、どーしても根っこが引っこ抜けない。
しかも。
最初にかけた麻酔が切れてくる。
そして歯茎にまだ膿が残っているそうで、そのせいで麻酔の効きが悪い。痛む都度麻酔をいれるのだが、なんだかもう焼け石に水。
痛いんだよー。もうそのドラバーだかノミだか知らんが突っ込まんでくれ、頭割れそうだよー。死んじゃうよー。
疲れ果ててもう痛みに対しても投げやりである。
そして。
根っこが取れたとき、正直、私にはわかんなかったんだよねー。
でもねー、医者が使ってた道具すっぽ抜けてねー。
「いやー落ちちゃいましたけど抜けたから大丈夫です」
あーそーか、終わったんだ……
と思っていたら、根っこは取れたけどまだ歯茎とは仲良しだった歯を強引に外され藤生、まだまだ甘い己に反省。
できた穴を一針縫う頃には、医者も藤生も疲れ果てておりましたとさ。
「根っこが曲がって歯にしっかりくっついていたから。予想の倍の時間かかったね……」
左様でございますか。
いらんところで根性あるな、私の身体……。
「時間かかったから腫れると思いますので痛み止め飲んでおきましょう。痛かったでしょ、泣いてもいいですよー」
と受付のおねーさんに言われた。
そのときは痛くなかったが、外に出て寒風に吹かれたら三歩で痛くなり、藤生、会社への道すがら泣く。いやまぢ。
会社を出たのは1時55分だったが、戻ったのは4時10分であった。ホワイトボードの「帰社予定3:30」の文字が哀しい。
そして痛み止めが効くまでの20分、藤生はデスクに突っ伏して呻くことになる。
そして、立てるようになった直後、コピー20部頼んでくれたU次長。ありがとう貴様覚えてろよ畜生……。

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