京成の密室

2000年9月29日
出してくれ。

私は朝から胸中で悲鳴を上げていた。
通勤電車の中である。
京成線の通勤特急はみつしりと混んでいた。
吊革にも掴まれず立っているので妙に体勢が不安定である。両足を降ろしてはいるものの、右足にはほとんど体重はかかっていない。
体は斜めになったまま固まっている。
電車が揺れたら倒れるかもしれない。
だが電車は揺れないのだ。
何故ならそれは──別にリニアモーターカーだの新幹線だのに乗って通勤しているというわけではない、単に、止まっているからなのである。
だがそこは駅ではない。
駅と駅の間である。
先行電車が自動車と接触事故を起こしたとやらで、停止信号が着きっぱなしなのだ。
読みかけの狂骨を持つ手もぷるぷる震えてくる。
車内はこの季節に気でも狂ったかクーラー前回で冷え切っている。何故に真夏のラッシュタイムに冷房をかけずに今かけるのか私には理解できない。
だが何より私を苦しめたのは──前に立ちはだかる中年の男であった。

──ワキガがきっついんだよう。
そのまま電車は15分程止まっていた。どっとはらい。

本日文庫版「狂骨の夢」読了。明日の午前中に図書館に行こう。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

日記内を検索